Spectral De-noise () - RX 8 Help

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モジュール&プラグイン

概要

スペクトル・ノイズ除去機能は、問題のノイズのプロファイルを分析し、信号から差し引くことによって、定常または緩や かに変化するトーン・ノイズと広帯域のヒスを除去するよう設計されています。これは、テープのヒス、HVACシステム、屋 外環境、ライン・ノイズ、グラウンド・ループ、カメラのモーター音、ファン、風、多くのハーモニクスを持つ複雑なバズ などの除去に便利です。

スペクトルノイズ除去機能でバックグラウンド・ノイズのプロファイルを分析し、信号の振幅がスレッショルドの設定値を 下回ったときそのノイズに減算処理を行います。この柔軟な機能によって正確かつ質の高いノイズ低減を、迅速に行うこと ができます。また個別の操作項目により、トーン・ノイズ、広帯域ノイズ、ノイズ除去により新たに発生したアーティファ クトの処理や、周波数スペクトル全体の低減処理を行うためのインターフェースによって高い操作性による編集をも可能に します。

操作項目

Learn(分析)

Learn機能が有効のとき、スペクトル・ノイズ分析は選択範囲のノイズ・プロファイルを取得します。ノイズ・プロファイ ル取得後、処理中は固定状態になります。ファイル通して一定かつ連続的なノイズを除去または低減するには、手動で分析 したノイズ・プロファイルが最適です。

スペクトル・ノイズ除去機能でノイズ・プロファイルを分析するには

  • ファイル内で最もノイズの長い箇所を選択します。(数秒の長さが理想的です)
  • “Learn"ボタンをクリックし、ノイズ・プロファイルを取得してください。
  • RXオーディオ・エディターのスペクトラル・ノイズ除去でノイズ・プロフィールを取得するには、範囲選択をしてか ら"Learn"をクリックします。
  • RXのスペクトラル・ノイズ除去プラグインでノイズ・プロフィールをキャプチャするには、“Learn"ボタンを推して 待機状態にしてからオーディオを再生するか、またはAudiosuiteで"Preview"を選択すると、範囲選択された箇所のノイ ズ・プロフィールを取得します。

ノイズ・プロファイルの分析に関するより詳しい情報

RX 8オーディオ・エディターで複数の選択範囲からノイズ・プロフィールを分析する方法や、最良の結果を得るため の詳細については、後述のより詳しい情報のセクションをご覧ください。

Adaptive Mode(適応モード)

適応モードが有効のとき、スペクトル・ノイズ除去に使うノイズ・プロファイルは信号に応じて変化します。適応モードは 経時的に変化する屋外環境、交通音、波音などのノイズ除去に効果的です。

メモ:スペクトル・ノイズ除去の適応モードのパフォーマンス

スペクトル・ノイズ除去の適応モードはコンピュータの多くのメモリとマシン・パワーを消費します。適応モードによるノ イズ除去でさらに効率的な方法を取るには、高い効率性とゼロ・レイテンシーをもって設計された Voice De-noise(声音ノイズ除去)の適応モードを試してみてください。

Learning Time [s](分析時間[秒])

適応モードで経時的に変化するノイズ・プロフィールを分析するときの先読み時間を決定します。

Threshold (Noisy/Tonal)(スレッショルド - ノイズ成分/音色成分)

ノイズとその他の信号の振幅分離調整の設定をします。

  • 高いスレッショルドに設定するとノイズはより除去されますが、低いレベルの信号成分も抑制される恐れがあります。
  • 低いスレッショルドに設定すると低いレベルの信号もより細部まで保持しますが、ノイズが信号によって変調されてしま う恐れがあります。スレッショルドを上げる操作はトーン信号とランダムなノイズとで個別に調整する事が可能です。デ フォルトの値としては0dBが良いでしょう。

ヒント

バックグラウンド・ノイズの振幅内で経時的に変化する場合(例えば交通音や地面の音)、その変化に対応できるようス レッショルドを上げるようにしてください。

Reduction (Noisy/Tonal)(減少量 - ノイズ成分/音色成分)

ノイズを抑制する量をデシベル単位で操作します。スペクトル・ノイズ除去モードではトーン・ノイズ(ハム、バズ、干渉 ノイズなど)と偶発ノイズ(ヒスなど)とを自動的に分類できます。分類されたノイズに対して個別に抑制処理を行う事が 可能です。(例えば、気にならない程度のヒスは残しつつ好ましくないバズのみを除去するなど、その時の状況で最適な処 理を行えます)

ノート

ノイズへの強い抑制処理により低いレベルの信号も低下させてしまうため、ノイズが気にならなくなる程度の適当かつ必要 最低限の抑制に留めることをお勧めします。

Quality(品質)

ノイズ除去の品質と計算処理の複雑性が変わります。この設定はCPU使用率に直接影響します。RXのスペクトル・ノイズ除 去モジュールには、処理時間の異なる4つのアルゴリズムがあります。

  • A: CPUへの負荷が最も少なく、リアル・タイム処理に適しています。これは信号スペクトルの平滑化を行うことで新 たな音楽的ノイズの発生を抑えます。
  • B: 時間と周波数の両方へ、適応型2D平滑化処理を行うことでさらに高度な音楽的ノイズ抑制を行います。CPU負荷が 上がりレイテンシーも発生しますが、ほとんどのマシン環境でリアル・タイム使用をすることが可能です。
  • C: 信号のトランジェントの処理を改善し、新たな音楽的ノイズの発生をさらに抑えるためにマルチ解像度演算処理 を追加します。CPU負荷の非常に高いアルゴリズムであり、より高速なマルチ・コアのマシンでのみリアル・タイムに実 行できます。
  • D: ノイズに埋もれた信号の細部を再生成する高周波数の合成音を追加します。アルゴリズムの処理速度はCと同等で す。

Artifact Control(アーティファクトの操作)

ノイズの除去方法についてどの程度、スペクトル減算処理か広帯域ゲートのどちらに基づくようにするかのバランスを設定 します。

  • 低い値の場合、ノイズ除去方法はスペクトル減算処理によって行われます。ノイズとそうでない信号の分離がより正確に 行われますが、過度な処理により、新たな音楽的ノイズを発生させたり、処理後の音が、小鳥がさえずるような耳障りな 高音や水中にいるようなこもった音を生み出す恐れがあります。
  • 高い値の場合、ノイズ除去方法は広帯域ゲートによって行われます。新たな音楽的ノイズの発生を抑えることはできます が、幅広い帯域にゲート処理が行われたような音になることや、信号がスレッショルドを下回った直後にノイズのバース トが起こる恐れがあります。

Noise Spectrum Display(ノイズ・スペクトル画面)

ノイズ・スペクトル画面で再生中、ノイズ除去処理が適用されているとき、役立つ情報を表示します。

  • ノイズ・スペクトル画面の色分け
    • 入力(灰色): 入力信号のスペクトル。
    • 出力(白色): ノイズ除去後の出力信号のスペクトル。
    • ノイズ・プロファイル(オレンジ色): 分析したノイズ・プロファイルとスレッショルドのオフセット。
    • 残存ノイズ(黄色): ノイズ除去後に残ったノイズ・フロアで、リダクション・カーブを修正することで調整可能。
    • リダクション・カーブ(青色): 手動でのスペクトル全体へのノイズ低減の重みづけ設定。

Smoothing(円滑化)

リダクション・カーブが有効のとき、リダクション・カーブの操作点の間の補間量を操作して曲線を鋭くするかなだらかに するか設定します。

Reduction Curve(リダクション・カーブ)

有効時、最大25つの編集点を追加できるスペクトル低減カーブによる微調整を行います。これにより各周波数帯域に適用す るノイズ低減量をカスタマイズすることができます。

  • 編集点の値が高い場合、その周波数帯でのノイズ低減量が減ります。
  • 編集点の値が低い場合、その周波数帯でのノイズ低減量が増えます。
  • 例えば、低いHVACランブルを除去して高周波数域のレベルは保持する場合、一番左の編集点をわずかに下げ、5kHz周 辺に編集点を作ってわずかに持ち上げると良いでしょう。

リダクション・カーブの編集点の追加/削除

  • 編集点の追加: エンベロープ・カーブ上でカーソルを重ねると灰色のボックスが表示されるので、左クリックしま す。
  • 編集点の削除: 編集点を右クリックまたは画面外へのドラッグします。
  • Shiftキーを押さえながら編集点をドラッグすると、リダクション・カーブの編集点の軸を固定します。Control/Command キーを押しながらドラッグすると微調整が可能となります。

Reset(リセット)

リダクション・カーブをデフォルトの0dBに戻します。

Advanced Settings(高度な設定)

Algorithm Behavior (Advanced Settings)(アルゴリズムの動作(高度な設定))

Smoothing(平滑化)

過度なノイズ処理による新たな音楽的ノイズの発生を抑えます。

音楽的ノイズとは

音楽的ノイズとはサブバンド・ゲートのトリガーを偶発する、ノイズ・スペクトラムのランダム統計変動により発生しま す。このノイズ、すなわちアーティファクトはノイズ・リダクションの過程で発生し、小鳥のさえずりのような、水中のよ うな音と表現されています。

Algorithm(アルゴリズム)

オーディオ処理中にスペクトル上に偶発するリップル(音楽的ノイズ)を除去するための平滑化アルゴリズムを選択しま す。平滑化処理の強さはスライダーで調整します。

  • SIMPLE: すべての周波数で個別のFFTノイズ・ゲートを適用します。サブバンド・ゲートのリリース時間は、 “Release"のスライダーで制御します。これはリアルタイム動作に適した低レイテンシの高速アルゴリズムです。FFTチャ ンネルの全ての周波数に個別のノイズゲートを適用します。サブバンドゲートのリリース時間はReleaseにより操作しま す。レイテンシーが少なく、処理の速いアルゴリズムのためリアル・タイムの使用に適しています。
  • ADVANCEDとEXTREME: 時間と周波数の両面からオーディオ分析を行うことにより、音楽的ノイズの少ない、質の高い ノイズ除去を実現します。これらのアルゴリズムはレイテンシーが高く、より複雑な計算処理を行います。

FFT size(ms)(FFTサイズ(ミリセカンド))

処理の時間と周波数解像度を設定します。

  • FFTサイズが大きいほど、周波数帯域を広げてより狭いハーモニクス間のノイズを除去できるほか、隣接する信号に影響 を与えずに定常ノイズのハーモニクスを除去する事ができます。
  • FFTサイズが小さいほど、信号の変化に対する応答が速くなり、信号のトランジェント付近に起こるエコー・ノイズを抑 えます。

FFTサイズ変更後は分析をやり直す必要があります

FFTサイズを変更した後はノイズ除去モジュールの分析機能を再度行うことをお勧めします。異なるFFTサイズによって得ら れた変更前のノイズ・プロファイルでは、ノイズ除去の精度が下がります。

Multi-Res(マルチ解像度処理)

このチェックボックスにチェックを入れると、選択したアルゴリズムに基づくマルチ解像度処理機能を有効にします。信号 がリアルタイムで分析され、その信号に合ったFFTサイズが選択されます。これによりトランジェント信号のスミアリング を最小限にするほか、必要に応じて高い周波数分解処理が行われるようになります。

メモ

マルチ解像度処理モードではFFT解像度は自動で設定されるため、FFTサイズの設定を変えても処理に影響を及ぼしません。 また、マルチ解像度処理モードへ変更しても、ノイズ・プロファイルを再分析する必要はありません。

Fast Fourier Transform(高速フーリエ変換)(FFT)

信号周波数スペクトラムの計算処理のことです。FFTサイズが大きいほど周波数の解像度は高く、すなわち、ノートとトー ン・イベントが明瞭になります。ただしFFTを使用する場合、ソースから削除する音が多くなるほど不要なノイズを生み出 す可能性があります。

Noise Floor (Advanced Settings)(ノイズ・フロア(高度な設定))

  • Synthesis(合成): ノイズ処理後に高周波成分を合成します。
    • “Synthesis"の値が0より上に設定されていると、ノイズ除去後に信号のハーモニクスを合成します。合成したハーモニ クスはノイズ・フロアと同じレベルを保ち、ノイズ除去処理によって失われた高周波数帯域を穴埋めします。
    • “Synthesis"の値を上げることで、より処理信号に音像の生命感と空気感を与えることができますが、設定が高すぎる と明らかにディストーションが発生する場合があります。
  • ENHANCEMENT(強調): ノイズ・フロアに隠れた信号ハーモニクスを強調します。
    • 強調機能によって信号のハーモニクス構造を予測し、信号のハーモニクスがノイズに埋もれてしまうであろう箇所で は、ノイズの処理量を少なくします。これにはノイズに埋没した、あるいはモジュールに検知されなかった高周波数帯 域のハーモニクスを維持する狙いがあります。これはノイズに埋もれるか、モジュールに検知されない恐れのある高周 波数帯の信号を保持に役立ちます。
    • 強調機能によって信号をより明るく、より自然な音像にすることができますが、この設定が高すぎると信号によって高 周波数ノイズが変調される可能性もあります。
  • MASKING(マスキング): ノイズが聞こえない場合に、ノイズ処理の深度を減らします。
    • マスキング機能により心理音響モデルを用いて、ノイズ処理量を動的に制御し、聞き取りの難しいノイズをより柔軟に 処理できるようにします。この機能でノイズが聞こえないとされる箇所を判断し、その箇所での信号処理を妨げます。 これにより不必要な処理が減り、信号の整合性を保ちやすくなります。スライダーを操作して心理音響モデルによって 処理を抑えるレベルを設定します。
    • 聞き取れない非常に高い周波数のノイズを削除するには設定を0にします。それ以外の場合は設定を10のままにしてく ださい。

メモ

このスライダーを0の位置にしているとこの機能はオフになり、ノイズ除去の量はスペクトル・アナライザーの黄色い曲線 によって制御されます。(より正確に表現すると、黄色とオレンジの曲線の差異によって決まります)。

  • WHITENING(ホワイト・ノイズ化): 処理後のノイズ・フロアの形状をよりホワイト・ノイズに近づけます。ホワイ ト・ノイズ化機能は異なる周波数帯に適用するノイズ減少量(黄色い曲線で表示)を修正し、残留ノイズのスペクトルを 形成します。
    • “Whitening"がゼロのとき、“Reduction” (音色/広帯域)スライダーで操作されるように、ノイズ抑制処理はすべての周 波数に対して均一に働きます。そして原音のノイズと抑制後のノイズの形状は類似します。
    • “Whitening"の値が最大のとき、抑制後のノイズ・フロアの形状はホワイトノイズのものに近くなり、残留ノイズはよ りニュートラルな音像となります。

      ホワイト・ノイズ化機能の効果を確認する

      ホワイト・ノイズ化機能を使用してノイズ・フロアのバランスを調整すると、過度な処理による音の欠損を抑止するこ とができます。しかし不自然なホワイト・ノイズ・フロアにより編集作業やミックス作業中に、固有の場所でノイズ変 調などが発生する恐れがあります。

Dynamics (Advanced Settings)(ダイナミクス(高度な設定))

  • KNEE(ニー): アルゴリズムによる、信号とノイズの識別がどの程度精確かを設定します。スライダーでノイズ除 去処理におけるゲートのニーの鋭さをコントロールします。
    • 設定値が高い場合、ノイズ除去の反応がより極端になりますが、信号内でのノイズ検知にエラーが生じる恐れがありま す。
    • 設定値が低い場合、ニー付近のノイズ除去はより寛容になり、スレッショルドをわずかに下回る信号に適用され減衰量 が少なくなります。これによりノイズ除去の深度が低くなる恐れはありますが、アーティファクトの発生が少なくなり ます。
  • RELEASE [ms](リリース[ミリセカンド]) サブバンドのノイズ・ゲートのリリース時間をミリセカンド単位で設定 します。リリース時間を長くすると音楽的ノイズの発生が少なくなりますが、信号のトランジェントの冒頭部分やリバー ブの減衰箇所も除去される恐れがあります。

    メモ

    “Release"の操作はアルゴリズムのSimpleモードが選択されているときのみ有効です。

より詳しい情報

手動でノイズ・プロファイルを取得しているときに最良の除去処理を行うためのヒント

  • ノイズ・プロファイルの分析を行う前に、録音音声でノイズ_のみ_含まれている箇所、かつ最も長い部分(数秒間が理想 的)を特定し、範囲選択してください
  • 最良の処理を行うために、保持したいオーディオ成分は範囲選択を行わないようにしてください。(自身がノイズだと判 断しない音声は選択範囲に含めないようにしてください)
  • 通常、そのようなノイズのみ含まれている箇所とは、ファイルの始めと終わり、または録音の中断、休止部分に含まれて います。(例えば、読み上げ音声における単語間にある空白のことです)

複数の選択範囲からノイズ・プロファイルを分析する

スタンド・アローンでのRXアプリケーションでは、複数の選択範囲からノイズ・プロファイルを分析する事ができます。こ れは分析を行うにあたって、ノイズのみの箇所がオーディオ内で見つけにくいファイルなどで有効です。

例えば、人の話し声にノイズが乗っている箇所を修正したい場合、声のないノイズ部分を数箇所投げ縄ツールかブラシツー ルを使用して選択し、分析を行うとより精度の高いノイズ除去が可能になります。範囲選択を複数行うには、Shiftキーを 押しながら範囲選択をすることでできます。

可能な限り多くのノイズ箇所を範囲選択し、より精度の高いノイズ・プロファイルを作りましょう。

この機能はRXのスペクトル選択ツールを使用したり、選択範囲の時間、周波数に対して複雑な計算処理を要するため、スペ クトル・ノイズ除去機能のプラグインとして使用することはできません。(スタンド・アローンのアプリケーションとして RXを使用する場合のみ使用可能です)

複数の選択範囲から完全なノイズ・プロファイルが作成できない場合、RXは既存のプロファイルからその状況に適したノイ ズ・プロファイルの作成を試みます。もし完全なノイズ・プロファイルの作成に至らない場合、RXは補完的なプロファイル 作成をサポートします。

例えば、100Hz以下の低周波数ノイズしか検知できなかった場合、RXは200Hzから5000Hzにかけての広帯域ノイズや8000Hz以 上の高周波数ノイズの定義を補完します。

複数の選択範囲を行ってプロファイルを構築することで除去処理の柔軟性が生まれ、見逃しやすいノイズもRXが捉えます。

RX 8.5.0

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